上映最終日に滑り込み。吉田修一原作×李相日監督の映画「怒り」は重く苦しくとも観て良かった

前々から観たかった映画「怒り」を今日ようやく観てきました。もう県内ではエミフルMASAKIでしか上映していなくて、それも今日が最終日。滑り込みセーフでした。

映画のことを語るのは非常に難しいと常々思っていて、今回の「怒り」にしたって、んまーごっついもん撮りましたなあ…とただただ圧倒されるばかりで、感想らしい感想がうまく紡げません。帰り道にいろんなシーンが頭の中で反芻されて、それぞれにいろんなことを思って、しかしそれを言葉に出すことが難しく思えてしまいます。

あらすじとしては、ある殺人事件があり、その指名手配犯とどことなく似ている素性の知れない3人の男が、それぞれ別の土地で打ち解けることができる人と出会い、それぞれ別のドラマが展開される、というようなものです。

この3人の男、それからその男の流れ着いた土地とそこで出会う人々には全く繋がるものがありません。ネタバレにならないように慎重に言うと、3人のうち2人の男は、単に指名手配犯に似ているというだけで事件にさえ全く関係がないのです。こういう物語の構造って面白いなと思いました。

この3人の中で誰が犯人なんだろう、というのが最初は気になっていましたが、途中からそれは二の次という感じになりました。それよりも、事件とは関係がないはずの男たちのストーリーも同時展開されていく中で見える、「人を信じる」ということをどうやって信じていくか、周りのノイズを気にして疑いの心に火がついて、それに苦しむ人々の感情を想って、胸を痛めたり声をひそめて泣いたりしながら観ていました。

今の自分の心境では、ややヘヴィすぎるようにも思えたのですが、それはそれとしても、やっぱり観てよかったと思える作品でしたし、もう一度、二度、観たいとも思いました。

それにしてもまあ、妻夫木聡大先生の演技の素晴らしさよ。今回もめちゃくちゃ役作りに投資して、相手役の綾野剛さんと2週間くらい同棲したらしいのですが、もう本当に笑っちゃうくらいナチュラルすぎてそこらへんにいるカップルにしか見えませんでした。ブッキー大先生は「ジョゼと虎と魚たち」を観た時からこの役者すげえと思ってて大好きなんです。どこにでもいそうな大学生とかどこにでもいそうなサラリーマンとかやらせると本当に上手ですよね。

それから映画を観たら改めて原作小説も読みたくなりました。わたくし元々、原作を書いた吉田修一さんの小説が大好きで、それこそデビュー作の「最後の息子」からベタ惚れだったんですが、何しろエネルギッシュに執筆される多作な方だし、初期の頃のような特に事件も起きないけれどクールな目線で描くタイプの作品から読むのも体力勝負な作風になって追いかけきれなくなったので最近はすっかり御無沙汰しているのですよ。でもこれは読みたい。老眼鏡かけてしっかり読みたい。

そしてこれも書き忘れてはいけません。李相日監督の作品は、やっぱええですわ。日本映画学校卒業制作である「青〜chong〜」はわたくしにはイマイチでしたがそれ以後は「69 sixty nine」にしても「フラガール」にしても「悪人」にしてもハズレなしで安心して観られます。

ということで、感想のような感想にもなっていないような観たよ報告。どうせならまだまだ上映館が多い頃に書くべきでした。DVDやブルーレイでも、動画配信でも、観られる機会があったら是非どうぞ。

ちなみにわたくし、3人の中で真犯人は誰か、当てることは出来ませんでした。すぐ人を信じちゃって殺られるタイプなのかもなあ。

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