今日は特に書くことないなあと思いながらついうたた寝をしてしまって、目が覚めたら驚きのニュースが飛び込んできていたではありませんか。ノーベル文学賞受賞者にボブディラン氏が選ばれる!
これは凄いことだと思うのですが、ざっとニュースサイトを眺めていると半数くらいは「村上春樹氏今回も受賞ならず」の切り口からの記事だったのが奇妙な感じに思えました(わたくし村上春樹さんは大好きなんですけどね)。
で。ボブディラン氏。言わずと知れたアメリカのシンガーソングライターなのですけど、わたくしは実はそんなに彼の歌を聴いたことがないんですよね。ただ、好きなミュージシャンが、特に作詞において影響を受けた人物として名を挙げるので、ビートルズくらいには偉大なんだろうなと思っております。
その程度の認識しかないわたくしなのですが、実は一度だけ彼のライヴを観に行ったことがあるんですよ。2003年2月のことでした。この時のツアーって、来日公演の計画もあったそうなのですが結果的に頓挫したので実現しませんでした。
じゃあどこで観たのかというと、ニュージーランドで。もちろんその為に追っかけて行ったわけではありません。ちょうどその時にワーキングホリデービザでニュージーランドに滞在していて、暮らしていたウェリントンという街でも公演があるというので、そんなビッグネームがやってくるなら見ておくか、と軽い気持ちでチケットを手に入れたのでした。
調べた限り、特にアルバムをリリースした後というわけでもなさそうなので、新旧織り交ぜた曲を演るライブなんだろうなと予想はしていましたが、その旧譜の膨大な量と当時の忙しさに、いわゆる「予習」なんてできる気がせず無装備で臨みました。
で、実際、本編では知っている曲なんてほぼ皆無で、アンコールでようやく「Like A Rolling Stone」を一緒に口ずさめたくらいでした。そういう意味では必ずしも満足したとは言えないのですが、予習もしていなかったし、それなりに楽しかったから、ま、いっか、くらいに思っていました。なので細部までは印象に残っていません。
ただ、てっきり彼のステージならばギター1本の弾き語りに近いスタイルか、大編成バンドでやはりギターを弾きながら歌うスタイルだろうと思っていたのに、4人くらいの小編成バンドでしかも大部分の曲をギターではなくキーボードを弾きながら歌っていたのは意表を突かれましたね。一曲目の途中まで、あれ?ボブディランいつ出てくるんだろう?と思ってしまったくらいです。
受賞のニュースでこのライブに行ったことを思い出して検索してみたら、公式サイトに過去のセットリストが載っていて、あの日のライブのものも見つかりました。ああ、こんな曲をやってくれてたんですね。
改めて見て、真心ブラザーズがカバーした「My Back Pages」とU2がカバーした「All Along The Watchtower」を演奏してくれてたんだなあということに気づきました。その本家本元の演奏、全然記憶に残っていないんですが、そういえば確か当時それを嬉しく思っていたよなあということは思い出しました。こうやってセットリストを残してくれていることに感謝しなければ。
ついでに思い出した余談ですけど、当時同じ家でルームシェアをしていた年上の日本人女性が、若い頃にボブディラン大好きっ娘だったそうで、わたくしがライブを観に行ったという話をしたら、とても羨ましがられました。
とても観に行きたかったけれど、チケット代が高かったし(当時のレート換算で7500円くらいだったと思います)、それに私は英語の勉強をするためにここに来ているのだからと自戒して泣く泣く断念したのだというようなことを話されました。「というようなこと」というのは、彼女とはこのアパート内では英語で話すという取り決めがあったのでアバウトな意思疎通しか出来ていなかったからです。本当は自分なんかより彼女のような人が観に行くべきなんだよなあ、と安ワインを飲みながら相槌を打っていました。
でも、その高いチケット代と、あの時の皿洗いで貰えるバイト代と、知ってる曲なんてほとんどなかったライブ、ということを総計しても観てよかったなという思いしか残らないんですよね。観て損はなかった、観てなかったらきっと後悔していた、とそう思えるのです。
ま、こうやってノーベル文学賞受賞が決まった日にblogのネタがすらすらっと出てくるだけでも損はしてないですよ(笑)。それにもし今後来日公演があっても、せいぜい5大都市くらいで松山になんて来ないだろうし、ボブディラン氏を観に行くためだけに上京とかも、今の聴き込み度では考えられないし。やっぱりあの時ウェリントンに自分が住んでてウェリントンにボブディラン氏がやってきてライブを演るなら「観る」が必然だったのです。
では改めてボブディラン氏のノーベル文学賞受賞を心よりお祝い申し上げます。おめでとうございます。これからはもうちょっと深く、貴方の詩に触れていきたいと思います。