事務所があるアパートの敷地の、それも玄関の真ん前にとても大きなイチョウの木があるのですが、近いうちに切り倒されることが決まったようです。えー、それはなんかちょっと可哀想じゃないですか、などということは申しません。
そのイチョウの木の高さは、アパートの屋根をはるかに超えて、他のマンション目安で言うと3階くらいまでの高さには伸びています。もうすでに、枝の剪定なんて素人にはできないレベルの巨木になっています。
3年くらい前に、アパートに住んでいらした大工さんがよじ登って枝も梢も短く切ってややコンパクトサイズにして下さったのですが、翌年にはもう元の大きさくらいに伸びてしまって、今やしっぺ返しを食らったかのようにより一層大きなサイズで茂っています。
庭木として緑があるのは心も落ち着くし良いはずなんですけど、この木はイチョウの雌株なので、秋になるとギンナンが実るんですね。その数たるや、拾って洗って干して酒の肴にしちゃおうどころの数ではありません。
そしてギンナンは種子の部分の中身ですけど、周りの果実の部分は独特の匂いがします。そりゃもう臭いもんです。熟れてジュルジュルになるのですよね。まあそれでも隣のおばあさんなんかは、拾い集めて食用にしてたようなので、そのついでに掃除もして下さってたのですけど。通行人の方も拾っていったりしてましたね。スーパーのレジ袋の大きいのでも、すぐいっぱいになるくらい落ちてましたから。
そしてギンナンのシーズンが終わると本格的に落ち葉の季節。この掃き掃除もお隣さんが頼まれたわけでもないのにやってくれていたのですけど、これはもう賽の河原で石を積むくらい途方もない作業です。
なのでお隣さんとしては、切り倒してくれた方がどんなに楽か、という感じだったようです。そして大家さんもやっと業者さんの手配に動いてくれたということなんですが、正直なところを言うと、そういうことを任せていた大工さんがいなくなったので誰にどう頼めばいいのか具体的にわからなくて手をつけられなかっただけで、切り倒すことで厄介な問題が一つ解決してスッキリくらいの感じで話されていたのが意外でした。
いや、てっきり、ここまで大きな木だから、お隣さんか大家さんには、何か思い入れがあって育てているイチョウの木というドラマめいたものがあるんじゃないかと勝手に妄想していたのですが。
ないんかよ。
業者さんが下見に来て、みんなが肩の荷を下ろすような表情だったので、なんか拍子抜けしたのです。あ、わたくしも、切るとおっしゃるなら反対はしませんよというスタンスですけど。とりあえず、アパートの屋根にかかる辺りの枝は切って頂かないと、枯れ葉が雨樋に詰まって軒先が水浸しになるし、カラスが枝に巣を作って玄関出たすぐの位置を排便シュート位置にしてくれるしで、軽く迷惑してたので。
北側寄りなのでイチョウの木陰がなくなってもそこまで日照や暑さにも大きな影響はないだろうと踏んでますけど、見通しが良くなりすぎて不審者も敷地に入りやすくなったり、拳銃で狙われたりしやすくなるのは少し心配ですね。
他にも失くして初めてわかるイチョウの木の有り難さがあるかもしれませんが、まずは何事もなく切り倒し作業が終わることを願っています。