またビールですか、はいはい。そう思われても仕方が無いかもしれません。本当はネタとして数日寝かせてもよかったのですが、なんとも珍しいビールだったので早く記事に取り上げてしまおうと書き殴っております。
それを飲ませていただいたのは、時々ふらりと立ち寄るスペインバルricaricaさんにて。こちらは(地元愛媛の地ビールなのに県内で飲めるのはここだけだという)梅錦ビールの生が飲めるお店なのです。ヴァイツェンであったりアロマティックエールだったりと時々種類を変えて常備して下さっていますが、そんなお店だからこそ、メーカーさんのほうから新しいビールや珍しいビールも提供して下さるのだということで。
それで、知らせをもらってから3週も経ってしまったのですが、やっと今日そのビールにありつくことができました。その名も梅錦SOKJYO!
…って、色や見た目は普通のビールとそう変わりませんよね。でもこれ、現代のウェブ上では伝える事が出来ないのですが、香りが全然違うのです。最近わたくしがBlogに取り上げているクラフトビール系の華やかなホップの香りとは全く異質な、甘めの、お米っぽいような、ふんわりした香りがグラスから広がるのでした。
それもそのはず、このビールは、世界初のビール酵母を使わないビールとして生み出されたものなのだそうで。原材料は麦芽、米、米麹、ホップだということです。要するにビール酵母じゃなくて日本酒の麹でビールを作ってみましたという感じなのでしょうか。さすがは清酒の蔵元です。
香りも日本酒風なら味わいも日本酒風で、口に含むと、ビールの苦みや味わいも感じられるのですが、(梅錦が甘口のお酒だからか)ほんのりとした甘みが後口に残ります。そしてビールのシュワッとした喉越しも有りはするけれども、ほわんとした酔いの回り方は、どう考えたって日本酒のそれにそっくりでした。日本酒とビールのハイブリッドにしては、見た目がビールの割に中身は3:7で日本酒の勝ちみたいなことになっている印象です。
実は店に入って一杯目にこのビールを頼んだ時に、マスターに「え?これ飲むの?」というような顔をされ、「これ全然苦くないよ」と言われたのです。それでも「珍しいビールなんでしょ?だったら一度は試しておきたいから」と言い返して注いでもらったのですが、飲んでみて何故そんな顔をされたのか、すぐに解りました。わたくしがいつも好んで飲む味とは全然タイプが違うからです。
単体として決して不味いとかいうことではないのですが、飲むシチュエーションを選ぶビールだなという印象で、それはマスターとも意見が合ったようでした。色々飲んだあとで、デザートのように飲むか、もしくはグラス半分くらいの量を、食前酒のように飲むのがピッタリなのではないかと感じました。
実際、いつもはビールを注いでもらって一口二口飲みながら、この味に合いそうな料理を選んで、食べて飲んでを楽しむのですが、このビールにはピッタリはまる料理を見つける事ができませんでした。さらに言えば、いつもはビールの後にはまた違うビールを続けて飲むことがほとんどなのですが、このビールの場合は2杯目に続けて違うビールを飲む気にもなれず、しっくりくるのはワインしか思い浮かびませんでした(メニューに日本酒があれば日本酒でしたね)。逆に言えば、そうなるとマスターには悪いのですが、おつまみも頼まずその一杯だけで〆られる威力のあるビールだとも思いました。
この梅錦SOKJYOは実際に市販品として流通するのかどうかも未だわからないのですが、限定品なのでひとまずricaricaさんではこの樽で終わりだと言われていました。興味がある方はお早めに訪ねてみて下さいませ。
苦いからビールは嫌いと言う方々に、こういうビールもあるんだよ、こういう楽しみ方もあるんだよ、ということは知ってもらいたいので、またビールネタかよと呆れられてもわたくしは記事にし続けます。え?単にビール飲んだくれたいだけだろだなんて、そんな身も蓋もない事は言わないで下さいよ。