プリ様信者のわたくしも初耳の裏話満載!またプリンスを聴きたくなる名著「プリンス論」

事情で得意先事務所勤務のはずが臨時休業となりまして、一日引きこもっております。事務作業や雑用を処理したり文字通り身体を休めたりしつつ、気晴らしも兼ねて外へ出かければよかったなあと後になって思いました。

気分転換もインドアで済ませてしまったのでありました。最近めっきり本を読めなくなってしまったのですが(歳のせいか集中力が続かない)、気になる本を見つけて買って、3日目の今日、最後まで止めることができなくなって読み切りました。

あまりナントカ新書の類いは読まないのですが、これはHMVでCDを探っている時に候補表示が上がったので気になって入手しました。ノーナ・リーヴスというバンドのシンガーでもある西寺郷太さんの「プリンス論」という本です。

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タイトルの「プリンス」というのはアメリカ・ミネアポリス出身の黒人ミュージシャンの名前であります。わたくしと同じ40代辺りの方なら「パープルレインが大ヒットした歌手」と言えばおおよそ判るのではないかと思います。すごくマニアックな説明をすれば「ラブセクシーのジャケットで素っ裸になってるオッサン」です。

わたくし、このプリンスというミュージシャンが非常に好きなのです。きっかけは高校3年生の頃に聴いた、映画「バットマン」のサウンドトラックとして発売されたアルバムの収録曲「Batdance」。

メロディラインはコロコロ変わるし映画の台詞らしいものが切り貼りされているし、なんじゃこりゃ?という曲なのですが、聴いててクセになるし、なにより驚いたのは、かなり手間ひまかけて作ったであろうことはわかるのに、サウンドトラックアルバムからの第一弾シングルとか言っておきながら、映画本編ではこの曲が全く流れないという事実を知ったとき。「Batdance」は映画の素材を切り貼りして全く別のストーリーを作り上げて6分ほどの曲に仕上げたものだったのです。

音によるコラージュというわけですが、潜在的にわたくしも、切り貼りして別のものに改変してしまう作品というのは好きなので、若い頃の自分の感性にとても響いてしまったのだと思います。それから過去の作品、未来の作品を追っかけ、崇拝しています。

なので自分でも割とプリンスについては勉強して知識もあるほうだと自負していたのですが、やはりこの本は西寺さんの「同じミュージシャンから見たプリンス」という視点での記述がある分、専門的かつ解りやすい説明がとても興味深くてグイグイ読み進められました。

読みながら「あーっ!ほんまや!」と声をあげてしまった部分もいくつかありました。例えば、プリンスのヒット曲「ビートに抱かれて(When Doves Cry)」には、それまでのブラックミュージックでは肝と言えるくらい重要な楽器であるベースの音が無い、という指摘。ギターさえもイントロとアウトロにしか入っていないのだそうです。これまで何度もこの曲を聴いていたのに全く気づきませんでした。とにかく使用されている楽器が異常に少ない楽曲なんだと。

レコーディング段階ではベースのトラックも存在していたのだけれど、ミックス作業の時にベースが無いほうがクール、というプリンスの判断で削除されたのだとか。それは当時のヒット曲のセオリーでは異質なことで、非常にアバンギャルドな試みなのだそうですが、それでも全米1位を獲得出来る曲となったのだから、凄いセンスです。

その他にも、「パープルレイン」がヒットしたのは収録曲のBPMが幅広いからという話なども、西寺さんのミュージシャンならではの考察で面白いなあと感心しました。

また、マドンナやマイケル・ジャクソンとの関係性の話と「My Name Is Prince」の解釈の話とか、「We Are The World」をドタキャンした話とか、「アート・オフィシャル・エイジ」と宗教の話とか、なるほどー(それにしてもよく調べていらっしゃるな)と興味深く読めました。プリンス愛好家でありながらプリンス研究家でもありますね、西寺さん。とにかくプリンス愛に溢れています。

まあ、この内容が、プリンスの音楽を余り知らない人にはどれくらい響くのか解りませんけれども、ちょっと気になってて聴いてみようと思っている人には恰好の入門書になるのではないかと思います。

もちろん、プリンス好きで、80年代、90年代、そして2000年以降も彼の音楽を追っかけてきた人には、懐かしい歴史の教科書みたいにも感じられる良書だと思います。あー、読めない変な記号に名前変えてたよなあ!とか懐かしさいっぱい。是非手に取ってみてくださいませ。

http://www.amazon.co.jp/プリンス論-新潮新書-西寺郷太/dp/4106106345

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