朝から大雨だったのでお墓参りは断念して、ずーっとPCバックアップと格闘していた祝日でした。PCはどうも修理に出さないと解決しないようなので、これは得意先の備品でもあるし任せるしかありません。それより自社のこともしなければ。今月末で決算なのを忘れていましたよ。
その辺は置いておいて、小豆島〜豊島のことをそろそろ書き上げてしまう態勢にしておかないと旬が失われますね。
唐櫃美術館に立ち寄った後は、いよいよ目的地であるクリスチャン・ボルタンスキーさんの「心臓音のアーカイブ」へと向かいます。ここが豊島の第1目的地。そしてここで、このような箱を手に入れたのでした。
箱の中身はなんでしょう?と明かす前に、この「心臓音のアーカイブ」というのは何かというと、本当にその名の通り、世界中の人々の心臓の音を収蔵している施設なのです。
そこで何ができるか。施設内に「ハートルーム」という部屋がありまして、そこへ入って収蔵されている誰かの心臓の音を大音量で聞ける、というのがひとつ。ハートルームの中は暗闇で、天井から裸電球が1個ぶら下がっていて、その大音量の鼓動に合わせて明滅します。
ハートルームはただそれだけの部屋なんですが、その爆音の鼓動の響きに包まれて、ピカッピカッと光る電球の明かりが瞬間的に照らす部屋の中に居るという体験は、他では味わえない不思議なものでした。
わたくしは、最初はその音の迫力に驚きましたが、多分体の中に残っている胎内の記憶のようなものに呼応するのか、次第に居心地が良いというか安らぐというか、飽きるまでは居られそうな気がしました。
ですが同行した友人は、だんだん恐くなってきて早く出ようと促すわけです。いろいろな人の心臓音が代わる代わる流れるので、その鼓動の強さ速さによって(本当に驚くほど人によって違うのです)、どんどん不安感が増してきたとのこと。
こんなのがアートなの?って思う部分も多少ありましたが、そうやって人によって感じ方が全然違うというのは、やはりアート体験に重なるものなんだろうなと思いました。
さて、ここでできることの2つ目。今度は白を基調とした、窓から海も見える明るい部屋「リスニングルーム」にて、これまでに収集された心臓音を備え付けのPCとヘッドホンで試聴できるというもの。まるで図書館で資料を検索するような手軽さで、様々な人の心臓音を聞くことができます。
まずはここへ行くことを勧めてくれた友達が、私の心臓音もあるよと教えてくれたので、その友達の名前で検索をしてみました。そして再生ボタンを。
よく考えるとリアルに誰かの心臓音を聞く機会なんてないし、あるとしても何と言うかそれなりの濃密な関係性でもないと普通はありませんよね。へぇー、あの人の心臓音ってこんなにバスドラムがバシッと効いた感じの音してるんだー、とか思いながら何だかちょっと恥ずかしいような気分にもなりました。エロいんだよ言わせんな!
むしろ全然知らない人の心臓音を収録日とか名字とか登録番号とかでランダムに弾き出して淡々と聞き続けて違いを感じ取るのが楽しく思いましたね。こんな音で心臓を鳴らすこの人はどんな人なんだろう?と想像しながら。
これらが入館料510円で楽しめるんです。ちょっと高いかな?とも思いますが、ここに来たからには別料金1540円が必要になりますが3つ目の「レコーディングルーム」へも行くのをお勧めします。
レコーディングルームでできることは、その名の通り、自分の心臓音を録音すること、です。聴診器のような形のマイクを自分で胸に当てて、自分の心臓音を40秒録音します。すると、その心臓音データはここ心臓音のアーカイブに恒久的に保存されます。
そして録音したら、その音を先の「ハートルーム」で再生して下さいます。自分の心臓音を大音量で聴く体験!
ああ、こんな音を鳴らし続けているんだ、ということを改めて知り、誇らしいような、むず痒いような不思議な感覚になります。
そしてさらに、収録した心臓音はCDにしてお持ち帰りできます。510円で他人の心臓音を聞くだけは高いなと感じたくせに、自分の心臓音を残せてCDも貰えて2050円は安いなと感じるのはわたくしだけ?
ということで、先ほどの箱の中身は、わたくしの心臓音だけが収録されたCDなのでした。
登録番号は22067番。この番号で収蔵されていますので、心臓音のアーカイブへ行けば検索して聞くことができますよ。なお、わたくしの死後、お墓参りの代わりに利用することも可能です。
とにかく不整脈じゃなくて良かったと一安心。
なお、この心臓音のアーカイブはロケーションも建物も内装も非常に素敵なのですが、テンション上がりすぎてそのあたりの写真を一切撮ってなかったのが悔やまれます。まあまたいつか行ってみよう。
この施設は芸術祭会期外もオープンしているので、後日紹介するもう一つの目的地と合わせて皆様も豊島ぶらり旅を計画してみてはいかがでしょう。